DLTパイロット制度 ― 時限の実験枠
規則(EU)2022/858。2022年6月2日に官報掲載、2023年3月23日から適用。既存の市場インフラ規制を一部免除し、DLTで取引・決済を試せるようにする枠組み。恒久法ではない。
EU TOKENISED SECURITIES MARKET MAP
27か国に同じ規則が効く、期限付きの実験枠です。1つの認可が域内に広がる一方、2025年5月末までに認可されたインフラは3件でした。
01 · STATUS
「承認済み」「ルールが有効」「本番稼働」は別です。ここを混ぜないのがこのサイトの基本ルールです。
規則(EU)2022/858。2022年6月2日に官報掲載、2023年3月23日から適用。既存の市場インフラ規制を一部免除し、DLTで取引・決済を試せるようにする枠組み。恒久法ではない。
ESMAの2025年6月25日の報告書は、2025年5月31日時点で認可されたDLT市場インフラが CSD Prague・21X AG・360X AG の3件のみで、実取引も minimal だと記している。制度があることと、使われていることは別。
ESMAは、相互運用性の欠如と中央銀行マネーへのアクセスの無さを摩擦として挙げ、現行の上限が広い参加を妨げていると結論づけた。上限の再調整と、制度の長期的な位置づけの明確化を勧告している。
スペインのCNMVが、Securitize をDLTパイロット制度下の取引・決済システム(TSS)として認可したと報じられている。基盤にはAvalancheを選定。同社は米国とEUの双方で規制下のデジタル証券インフラを運営する形になる。
EUの単一市場では、ある加盟国で得た認可が他の加盟国へ広がる。Securitizeは2024年12月取得の投資会社ライセンスをドイツ・フランス・イタリア・ルクセンブルクへ拡張したと報じられている。国ごとに取り直す必要がない点が、米国の州・連邦の構造と異なる。
制度は当初3年で、1回だけ最大3年の延長が認められている。ESMAは延長・拡大・修正・恒久化のいずれかを欧州委員会に助言する立場で、報告書は長期的な位置づけの明確化を求めている。恒久化が決まったわけではない。
02 · OWNERSHIP
SECの2026年1月の整理を軸に、トークンの見た目ではなく法的構造と公式な所有記録で分類します。
暗号資産規制(MiCA)の対象外。MiCAは金融商品に当たらない暗号資産を扱う規則で、証券に当たるトークンはMiFID等の証券規制側に入る。ここを混同すると話が合わなくなる。
インフラ全体でも上限がある。合計の市場価値が60億ユーロに達する取引は受け付けられない。90億ユーロに達したら移行戦略を発動する。ESMAはこの上限が広い参加を妨げていると結論づけ、再調整を勧告した。
ただし免除は自動ではない。当局は自然人の保護のために追加措置を求めることができる。「できる」と「実際に個人が売買している」は別の話。
03 · TRADING ROUTES
所有モデルと取引会場は別軸です。同じ「トークン化証券」でも経路によってルールと決済が変わります。
DLT金融商品のみを取引に受け入れる多角的取引施設。ドイツの360X AGが2025年4月29日から許可を得ている。
DLT金融商品の決済を行い、最初の記録も可能にするシステム。チェコのCSD Pragueが2024年10月11日から許可を得ている。既存の中央証券預託機関が枠組みに入った例。
取引と決済を同じ主体が行う区分。この枠組みでしか認められない形。ドイツの21X AGが2024年12月3日から許可を得ており、Securitizeもスペインで同区分の認可を得たと報じられている。
04 · REALITY CHECK
24時間取引・即時決済・自分のウォレットで保有・小口購入。よく語られるこの4つは、どのモデルでも同じように起きるわけではありません。
重要な注意: だからEUでは「今できること」と「将来も続くこと」を分けて読む必要がある。
重要な注意: ただし認可は各国当局が出すため、審査の実務は国ごとに違う。
重要な注意: 同じ「規制ができた」でも、対象が違う。
05 · ECOSYSTEM
規制当局の「承認企業一覧」ではありません。各社が公表・届出した役割を、出典つきで整理しています。
制度の運用状況を欧州委員会に報告し、延長・拡大・修正・恒久化について助言する立場。Q&Aも公表している。
認可と免除を実際に出すのは各加盟国の当局。フランスのAMF、オランダのAFM、スペインのCNMVなど。
チェコの中央証券預託機関。2024年10月11日からDLT SSの許可を持つ。
ドイツ。2024年12月3日からDLT TSSの許可を持つ。取引と決済を一体で行う区分。
ドイツ。2025年4月29日からDLT MTFの許可を持つ。
米国のデジタル証券基盤。スペインでEU初のDLT TSS認可を得たと報じられ、投資会社ライセンスを独・仏・伊・ルクセンブルクへ拡張した。米国版マップとつながる主体。
06 · LICENCES
登録・届出の効力発生・承認・免除は、どれも別の概念です。同じ「SEC が関わっている」でも意味が違います。
注意免除があれば自然人を会員として受け入れられる。取引の場であり決済は行わない。
注意中央銀行マネーでの決済は使えない。ESMAが摩擦として指摘した点。
注意従来の規制では想定されていない組み合わせ。この制度に固有の区分。
06 · REGULATION
法令、SEC命令、SROルール、No-Action Letter、スタッフ見解、企業構想を同じ強さで扱わないため、ステータスを分けています。
ESMA報告書によれば、CSD PragueはDLT SSの許可を2024年10月11日から保有している。
規則14条に基づく報告書。利用は限定的で実取引も少ないとしつつ、実験を促した効果は認め、上限の再調整と長期的な位置づけの明確化を勧告した。
07 · SOURCES
SEC・DTCC/DTC・NYSE/ICE・Nasdaqを最優先し、企業情報は企業公式として区別しています。
EU官報(EUR-Lex) · 2022-06-02 · 一次情報
ESMA · 2025-06-25 · 一次情報
ESMA · 2023-06-02 · 一次情報
欧州委員会 · 2026-04-21 · 一次情報
The Block · 2026-05 · 企業公式
Ledger Insights · 企業公式
AMF(フランス金融市場庁) · 一次情報
AFM(オランダ金融市場庁) · 一次情報
08 · METHODOLOGY
最初に「何を持つか」を確認し、次に「どの取引ルートか」、最後に「公式ソースと現在の稼働状況」を確認してください。トークン化という技術ラベルだけでは、株主権・カウンターパーティーリスク・決済サイクルは判断できません。